この記事ではコーディネーショントレーニング(coordinetion training)とは何かを説明します。
今、子どもの体操教室では『コーディネーショントレーニング』を取り入れているクラスが人気です。
サッカー教室などでもコーディネーション理論を基にトレーニング方法を組み立てているところが増えているようです。
ところで、このコーディネーショントレーニングとはいったいどういうものかご存知でしょうか。
コーディネーショントレーニングの意味とその歴史
スポーツで活躍する選手はいつでも子どもの憧れの存在です。
「自分もあんなプレーがしたい。」
「カッコいいゴールを決めて試合に勝ちたい。」
「優勝トロフィーや金メダルを手にして表彰台に立ちたい。」
健全で子どもらしい素敵な夢ですよね。そんな夢を叶えるにはどうしたらいいのでしょうか。
近年、子どもを教えるスポーツの教室などでよく出てくるのが『コーディネーション』という言葉です。
本来は“コオーディネーション”なのですが、日本で広まる際に表記が変わってしまいました。
また日本の子ども向け体操教室などで取り入れられているのはコーディネーション理論で提示された「7つの能力」を伸ばすという意味で使われていることが多いようです。
コーディネーションとは
それではコーディネーションとはいったい何かといいますと、「競技種目を超えた運動全般のスキルを伸ばすための訓練法」ということになります。
サッカー選手になるためにリフティングをするとかではなく、ホームラン王になるために素振り100回するとかではなく、運動のセンスがある人を作るためのトレーニング方法です。
運動のセンスというのは、「勘がいい」「素質がある」「運動神経がいい」「才能がある」といったような表現をされるときの能力です。
目や耳、皮膚などの五感から察知した情報を瞬時に脳が判断し、筋肉を動かすという情報処理能力の獲得を目指すことがコーディネーションの目的です。
コーディネーションの歴史
コーディネーショントレーニングは、旧東ドイツ(現ドイツ)のライプチヒ大学で研究されていたスポーツ科学から生まれました。スポーツ運動学としてマイネル(Meinel,K)によって1960年代に構築されました。
その昔、旧東ドイツでは、国策として、国際的なスポーツの試合で勝てる選手を育てるための研究が進んでいました。
エリートアスリートを育成するシステムのひとつとしてコーディネーショントレーニングも取り入れられていたのです。
そして、1989年11月ベルリンの壁の崩壊のあと、ヨーロッパに広まりました。
ヨーロッパではトップクラスのアスリートを強化育成する長期一貫性指導として取り入れられ、研究と実績が重ねられていきました。
2003年以降、日本でより一般向けに実践できるような理論を確立させて、普及していったのです。
今では、競技種目(サッカーやバスケットボールといった)によってコーディネーショントレーニングを取り入れる際に、その競技の特性を考え、どういう指導をしてどういう順番で練習をすれば一番効果が上がるかということを系統だてて実践されています。
コーディネーショントレーニングに最適なのは鬼ごっこ
実は子ども(特に幼児)のコーディネーション能力を鍛えるのに一番良いトレーニングは「鬼ごっこ」だと言われています。
鬼ごっこは人の動きにたえず反応していかなくてはならないのでコーディネーションの7つの能力がいろいろ組み合わされて習得できるのです。
7つの能力とは
コーディネーショントレーニングで鍛えるのは7つの能力に分類されています。
すなわち、1.定位(空間認知)、2.変換、3.連結、4.反応、5.識別、6.リズム、7.バランスです。
これらの能力の個々の説明は別の記事にまとめていますので、興味のある方はご参考にしてください。
コーディネーショントレーニングの7つの能力と幼児向けメニュー
日本で流行した背景
日本では子どもの体力低下の問題が課題のひとつでした。そこで平成21年(2009年)に「子どもの体力向上推進本部」が設置され、子どもの体力低下の実情の把握ととその対策を講じることになりました。
その後、東京都教育委員会では「平成27年度コオーディネーショントレーニング実践研究校」を定めています。
この場合はどちらかというと、「現代の子どもは地域で遊ぶ環境が減ってしまっているから運動能力が低下している。」
その対策としてコーディネーショントレーニングをさせよう。つまり、「体力向上のために身体を使った遊びをたくさんさせる」というのが目的となっています。
それから、他の教育委員会や様々なスポーツ団体でも「コーディネーショントレーニング」を取り入れるようになってきました。
コーディネーショントレーニングを子どもにいつ取り入れるのが最適か
コーディネーショントレーニングは何歳から取り入れても体力を向上させる効果はあります。
しかし、一番効果が現れるのはゴールデンエイジと呼ばれる脳・神経系の発達が著しい時期にあたる10歳前後です。
この発達をもう少し細かくみていくと、プレゴールデンエイジが4~8歳、ゴールデンエイジは9~12歳、その後にポストゴールデンエイジ13~15歳があります。
ゴールデンエイジとは、アメリカの学者スキャモンが発表した「発育曲線」のグラフで急激に神経系(脳・脊髄・視覚器、頭径)の発達が著しい年代をいいます。
ここで少し注意が必要なのですが、ゴールデンエイジにトレーニングによって身につけるコーディネーション能力を最大限にするには、プレゴールデンエイジの時期に十分に体を動かして遊んだ経験が前提条件として必要なのです。
例えば海水浴に行ったときを考えてみますと、1回の海水浴で子どもはたくさんの体験を積み重ねます。
裸足で歩いたらサラサラの砂が気持ちよかった、小石が痛かった。
海の水が塩辛くて、鼻に入ったら痛くなった。水の中で歩くのは難しかった。
力を抜いたら身体が水に浮いた。
こうした自分が実際に経験した様々な感覚がデータとして残っていき、後に自分の身体を動かすときに脳が瞬時に処理ができるのです。
つまり、コーディネーショントレーニングを取り入れるのはゴールデンエイジである9歳ごろからが良いのですが、その年齢までに外遊びの経験を十分しておくことが必要ということです。
まとめ
・幼児期はたっぷり外遊びの経験や楽しんで身体を動かすことがなにより大事、その後小学生になってから取り入れるコーディネーショントレーニングの効果が高くなります。
・子どもにとってコーディネーショントレーニングを行うことは、「体を動かすのが楽しくなる」、「一度習得した身体能力・運動感覚はずっと身に付く」という利点があります。
・またその後、本格的にスポーツに取り組むようになってからは、技の習得が早くなり(頭も良くなるので吸収力が高い)、ケガをしにくくなる、効率よく体を動かせるようになります。
注目を集める『コーディネーショントレーニング』ですが、昔は外遊びで自然と身につく能力でした。
近所の公園に自然と子どもが集まり、みんなで一緒に遊ぶという環境を持てない今の子ども達には意識して鍛えていくことが必要だと思います。